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2013年(平成25年)
 1月15日
  第28巻1通卷184号
  昭和62年5月22日第三種郵便物認可

チャップリン>184号


認知症の在宅介護を考える
〜超高齢者社会と共に増える認知症〜

 認知症の方と家族が住みなれた自宅で生活することは良いことだといわれることが多い。はたしてそうなのか?ある家族は認知症の方と介護者のためにショートステイやデイサービスを利用しています。自宅より賑やかなアクティビティがある環境の方がいいからです。このような介護保険のサービスを活用しながら認知症の方と家族が自宅で暮らすことはよいと思いますが、そのためにはさまざまな条件をクリアする必要があります。その条件を無視して同居に踏み切るとさまざまな問題が起こり、最悪の場合は介護心中を図るという悲惨な結末を迎えることも考えられます。

 
■認知症の状態■
 認知症が軽いから在宅介護が容易で、重度だから困難というわけではありません。多くの家族は認知症の方を在宅で介護する経験はありません。認知症が軽くても「あいつが盗んだ」と終日、言い張られると耐えがたく、疲労困憊し、介護放棄したくなるでしょう。では逆に、アルツハイマー病で常に臥床状態だと身体介護で容易だという家族もいます、一般的には認知症の行動心理症状(BPSD)が在宅介護を左右します。認知症の方を診る医師は診察室ではなく自宅でBPSDを把握すべきと思います。

 
■認知症の身体状態■
 認知症の方が、肺炎、心筋梗塞などの重篤な身体疾患などがあると在宅介護を続けるのは困難です。しかし糖尿病などの慢性疾患の身体状態については医療機関との連携があれば不可能ではありません。

 
■在宅介護する家族の有無■
 認知症の方の在宅で暮らすためには、最低限、常時見守りできる家族がいる必要があります。家族でなくても介護保険の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」が利用できれば不安定ではありますが、一人で介護することも可能となります。さらに「在宅療養支援診療所」があるとよいと思います。

 ■家族の理解と介護力■
 家族は認知症の人を正しく理解することが重要です。認知症介護のさまざまな情報がメディアを通して溢れていますが、家族が正しく理解しているとは限りません。誤解に基づく介護は両者を破綻に追い込みます。正しく理解していてもできるとは限りません。正しい認識が活かせるかどうかはその他の条件にもかかわってきます。

 
■認知症の方と家族との人間関係■
 認知症の方の在宅介護で見えにくく重要な問題が人間関係です。認知症を発症する前から良好な人間関係が保たれていると家族は介護への意欲が生まれ、在宅で適切な介護ができるでしょう。しかし発症前、良好な人間関係が構築されていないと家族は適切な介護ができず、被害意識が増してしまいます。

 
■住宅環境と経済状態■
 狭いアパートでは介護に不適切です。介護者の時間が過せる部屋があることは大切なことです。経済状態も在宅介護に無関係とは言えません。生活のために仕事が辞められない家族は介護との両立に苦慮します。仕事を終えての介護は大変負荷がかかります。在宅サービスを利用するにしても1割の自己負担が重く利用を減らすこともあります。長期の施設介護を望んでも経済的な負担ができず在宅介護にもどるケースもあります。また、3割または1割負担の医療保険と保険外負担も家族に重くのしかかってきます。

 
■家族・近隣住民の協力と理解■
 認知症の方の在宅介護は一人ではできません。家族・親族・近隣住民の理解と協力してくれる人が必要不可欠です。介護保険上のフォーマルサービスに加え、インフォーマルな支援、サービス活用が大切となります。

 
■地域で利用できるサービス■
 介護保険導入後、地域内で利用できるサービスは、格段に増えました。自治体が実施する「認知症高齢者早期発見システム」、保険センターの介護相談、「認知症の人と家族の会」などによる介護者の集いも利用できます。「認知症にやさしい街づくり」を目指す自治体も増えてきており支援体制を着実に広げつつあります。
 このようなさまざまなサービスが統合的に認知症の方やその家族に提供されることによって、住み慣れた地域と自宅において生活できることが実現されると考えます。