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2015年(平成27年)
 10月15日
  第30巻4通卷195号
  昭和62年5月22日第三種郵便物認可

チャップリン>195号

 

認知症機能の改善効果も
驚くべき緑茶の効果

■再注目の緑茶
 ユネスコの「無形文化遺産」に、和食が登録され、現在、日本の伝統的な食文化があらためて注目されています。中でも和食に欠かせない飲み物であり、古くから健康にもよいと言われている「緑茶」に大きな関心が寄せられています。実際に、緑茶には人間の健康に役立つさまざまな機能性成分が含まれており、多様な効果・効能があることがわかっています。例えばその代表格である緑茶カテキン(エピガロカテキンガレート・ポリフェノールの一種であり、お茶の渋みの主成分)については、抗酸化作用、抗菌作用、抗インフルエンザ作用など単に体内の有害物質を取り除くばかりでなく、神経細胞を保護・修復する高度な働きがあるとみなされています。またその他にも、ここ数年でさまざまな新しい研究結果が発表されており、緑茶の効果にあらためて関心が集まっています。

■認知機能の改善
 まず注目したのいのが、「認知機能の改善」の可能性に関する研究結果です。
 日本人の4人に1人が65歳以上となった現在の超高齢化社会において、認知症高齢者の増加は深刻な社会問題となっています。日本人の認知症の原因となる疾患は、大きく、神経変性疾患、脳血管性認知症、その他に分類されます。神経変性疾患の代表はアルツハイマー病で、認知症の原因疾患で1番多く、2番目に多いのが脳血管性認知症です。この2つが認知症の原因の大半を占めます。もともと、緑茶カテキンやテアニン(茶に多量に含まれるアミノ酸の一種)などの緑茶成分が神経の保護作用をもつことはいくつもの基礎研究で示されていましたが、2013年の「第54回日本神経学会学術大会」にて発表された、伊藤園中央研究所・静岡県立大学薬学部 山田浩教授・社会福祉法人 白十字ホームの共同研究によると、ヒトを対象とした臨床試験においても、緑茶粉末の摂取により「認知機能」低下の改善が確認されています。
 この研究は、認知機能が低下傾向にある高齢者を対象とし、本人および家族から文書同意が得られた施設入居中の方で、認知機能検査(世界標準検査 30点満点、23点以下は認知症が疑われ、24〜27点で経度認知機能障害の可能性有)の点数が27点以下の高齢者(平均年齢88歳、男性2名、女性10名)が、緑茶粉末を1日2g(総カテキン量 約227mg)、3か月間摂取したところ、12名中8名に改善が見られるという結果になった。さらに検査のうち、近時記憶(数分から数時間、数日など新しい記憶)を評価する項目で、特に顕著な改善が見られた。
 この研究で使用された緑茶の1日の摂取量は、高齢者でも日常的に摂取できる程度の量であり、しかも認知症の重症度にかかわらず改善傾向が見られた。
 さらに、近時記憶についての改善は、近時記憶の低下自体が認知症の初期症状であることを考慮すると、緑茶の摂取によって認知症の進行が抑制されることを意味します。
 この他にも、東北大学と金沢大学の疫学調査から、緑茶を習慣的に飲用することによって認知機能の低下リスクが抑えられる可能性も報告されています。こうした研究結果を踏まえると、短期間に緑茶を大量に飲んで一気に緑茶カテキンを摂るのではなく、毎日こまめに緑茶を飲んで、より効率よく緑茶カテキンを摂ることによって、認知機能の改善効果が得られる可能性があることが期待されます。

■がんのリスク低減
 また、緑茶の飲用とがんとの関連についても、多くの研究結果が報告されています。がんは、何らかの原因で細胞の遺伝子に変異が生じ、異常に細胞が増殖するようになった状態です。緑茶カテキンには、紫外線や化学物質による遺伝子の変異を抑え、細胞の異常な増殖を抑制する作用があり、さまざまな研究において、発がんやがん細胞の増殖および転移を抑えることが報告されてます。緑茶飲用によるがんのリスク低減の可能性に期待が高まっています。
 国立がん研究センターでの研究において、緑茶と胃がんとの関連を検討した結果、女性で緑茶を1日当たり5杯以上飲む人は、胃がんのリスクが3割ほど抑えられたことを報告している。
 また、毎日飲む緑茶の量が多ければ多いほど、大腸ポリープの再発が抑制されることも確認されました。
 このように緑茶を継続的に飲用し、緑茶カテキンを摂ることで、さまざまな健康効果が期待できることがわかり、茶離れがささやかれる中、普段の食事で、継続的に緑茶を飲用する日本文化、改めて見直すべきではないだろうか。